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公開日: 2025.11.07
更新日: 2025.11.07
シニアは「暇ではない」のが実態です。趣味の集まりや旅行、孫の世話などで多忙を極める彼らの貴重な予定枠に、一度でも参加できたとしても、継続して組み込んでもらうこと(定着)は、新たな集客と同様に難しい課題です。
彼らの貴重な予定枠において定着させるために、何が定着の壁となっているのでしょうか。

本稿は、イベントへの「定着」に焦点を当てます。 国内最大級の中高年・シニア向けコミュニティサービス「趣味人倶楽部」における、定量アンケート調査(約330件)と、人気の趣味ジャンル毎の自由回答(約130件)分析に基づき、シニアが定着する要素を整理いたしました。
▼趣味人倶楽部の詳細はこちら▼
前回の調査では、シニアのイベント参加において「不安の解消」が参加意欲を高める最大の要因であることが明らかになりました。
▼前回調査はこちら▼
今回着目した定着課題においても、参加前の集客課題と同様に「不安の解消」は重要な観点だと考えました。その上で、2回目参加に至るには「不安の解消」だけでなく、「体験自体の満足度」が鍵になると想定されました。
さらに「体験の満足度」はイベントジャンル毎に違うのでは?(例:飲み会では“人とのつながり”、セミナーでは“内容の充実度”であるなど)という仮説のもと調査を進めていきました。

まずは、直近1年間において趣味人俱楽部の中でリピートされている趣味ジャンルを調べてみました。(該当期間:20241031~20251031)

アウトドア、カラオケ、飲み会といった「交流・娯楽型」のジャンルのリピート率は76%前後と非常に高い一方、勉強会系のジャンルは29.41%と比較的低い結果となりました。
全体の満足度は高く、これがリピート参加の大きな要因と考えられる。特に登山やスポーツなど身体を動かすジャンルは満足度97%を超えるなど突出して高い傾向が見られました。
満足度、リピート率ともに最も高かったアウトドア(登山/ウォーキング/ハイキングなど)の理由は以下の通りでした。

「人と一緒だからより楽しめた」が最上位となっており、イベントのみではなく、人との交流が体験の満足度を押し上げている可能性が考えられます。
次にリピート率がやや低かったセミナー系の満足理由を見てみました。

先ほどの登山イベントとの差分としては、「スキル・技術・知識の向上を実感できた」や「達成感・成果が得られた」などが満足度に寄与することに加えて「日時・アクセス」に関しても満足度に大きく寄与すると想定されました。
これらの結果から、イベントジャンル毎に満足度に寄与する要因が一定異なることが示唆されました。
次にいずれかのイベントに2回以上参加した方(N=130名)に対し、継続理由の自由記述をイベントジャンル毎に分析し共通点や差分を抽出しました。(該当期間:20241031~20251031)
自由回答の定性データに基づき、シニアのイベント定着を決定づける要素を以下の3つの発見点に整理しました。
継続的にイベントに参加した方の多くが、ジャンルに関わらず、管理人さんの気配りなどに関しての言及も多く、「体験時の心理的安全性が高いこと」が重要であると可能性が想定されました。

参加継続動機は、大きく「交流主体(会話やコミュニケーションが目的)」と「実利主体(目標達成や知識取得が目的)」の2つが見られました。

登山イベントは、健康維持・達成感・交流など複数の利点を感じやすいイベントであり、これがリピートに寄与している可能性があります。一方で、登山特有の要因までは特定できなかったため、次回以降の検証対象と位置付けました。

今回の調査によって、趣味人倶楽部会員を対象としたアンケート調査にて、「どのようなイベントジャンルがリピートされているか」および「継続の動機は何か」を一定明らかにすることができました。
しかし、この集客から定着に至るプロセスを完全に構造化するためには、まだ不十分な点があり、以下の2つの視点でデプスインタビューや、フィールドワークを通じて明らかにしていきます。
1. 定着の阻害要因の特定: リピート率が低いジャンル(特に勉強会系)で離脱した参加者は、集客時の不安解消(前回調査)後に、活動のどの段階で継続を断念したのか? 定着フェーズ特有の心理的要因は何か。
2. 成功要因の深掘り: リピート率が高いジャンルにおいても、「なぜ数あるイベントの中から特定のイベントを選び続けるのか?」 主催者の運営スキルや企画の細部に隠された、定着を決定づけるトリガーはなんなのか。

これらの課題を解決するため、今後は定量・FAデータだけでは見えない深層心理に迫る定性調査(デプスインタビュー)や、フィールドワークを実施していく予定です。これにより、集客と定着の両方に対応できる、実践的なイベント設計の知見を深めてまいります。
本稿で整理した知見は、オースタンスが実際に支援するシニア向けセミナー集客の現場でも検証・活用されています。シニア向けのセミナーやイベント設計に課題をお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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