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公開日: 2026.04.30
更新日: 2026.04.30
葬儀業界の集客は、ここ数年で一気に様変わりしました。かつての折込チラシ、会館看板、地縁の紹介を軸にした集客は、検索やポータルサイトでの比較が当たり前になるなかで、通用しづらくなっています。
ただ、広告費を積めば成約が伸びる時代でもありません。家族葬が主流になり、費用への不信感が広がるなかで、「安さ」だけを打ち出す広告はかえって逆効果になる場面も出てきました。
いま求められているのは、緊急時に真っ先に思い出してもらう仕組みと、平時から事前相談につなげる導線の両立です。ポータル依存から抜け出し、自社への指名を増やしていくための考え方を、成約数を5倍に伸ばした支援事例も交えて整理していきます。
葬儀が他の商品やサービスと決定的に違うのは、「比較検討がほぼ行われない」点です。オースタンスの独自調査では、喪主経験者のうち葬儀社を2社以上比較した人はわずか14.4%。残りの約86%は1社だけで決めているか、比較する余裕もないまま契約に至っていました。
背景にあるのは、逝去後の強烈な時間的制約です。搬送先、安置場所、日程、僧侶への連絡。これらを数時間のうちに判断しなければならず、同調査でも逝去から3〜12時間のあいだに依頼先を決めたケースが確認されています。
この局面で優先されるのは、祭壇の豪華さでも知名度でもありません。「近い」「すぐ動ける」「連絡が通じる」という基本的な安心感です。頭に先に浮かんだ会社が、そのまま選ばれていきます。
顧客の評価軸も変わりました。オースタンスのインタビューでも、葬儀を「理想を叶える場」ではなく「滞りなく終える場」と捉える声が大半でした。加点ではなく、減点の少なさ。不手際のなさ、費用の透明性、説明の誠実さが、いま求められている要素です。

広告に求められる役割もはっきりしてきます。豪華さや安さを競うのではなく、「失敗しない選択肢」として真っ先に思い出してもらう。緊急時の第一想起と、平時からの事前相談。この2つをつなぐ設計が、これからの土台です。
出典:オースタンス「「選ばれる葬儀社」になるチラシ作成のコツ|好事例・改善例を徹底比較」
媒体選びで陥りがちなのが「どれがいちばん効果的か」という発想です。葬儀の場合は、優劣よりも「誰に、どのタイミングで届けるか」で役割を分けた方が、整理しやすく無駄も減ります。
カギになるのが「第一想起」です。急ぎの場面で遺族が頼るのは、はじめて目にした会社ではなく、普段から見かけていた会社。地域で名前が自然に浮かぶ状態をつくれているかが、選ばれる確率を決めます。
見込み客を2つに分けると、打ち手が見えてきます。


緊急層には、安心感と即時対応を前面に。MEOやリスティング広告で、「今すぐ動ける会社」を最短で伝える導線が効きます。
事前検討層にはアプローチが変わります。家族葬を入口にしつつ、家族の状況によっては一般葬も含めた選択肢を提示する「リスク提示型」のコミュニケーションが有効です。たとえば故人の交友関係が広い場合、身内だけで済ませた結果、数か月にわたってお線香あげの来客が絶えず遺族が疲弊してしまう。こうしたリスクを誠実に伝え、家族に合った形を一緒に考える対話を、チラシやCMといった平時の認知施策が支えます。
緊急層にもっとも強いのがWeb広告で、要はリスティング広告とMEOです。
リスティング広告は「地域名 葬儀」「急ぎ 葬儀」「家族葬 当日」など、意図の明確なキーワードに広告を当てる刈り取り型の施策です。ただし、広告を出しただけでは結果は出ません。クリック先のLPに24時間対応、対応エリア、搬送から葬儀後の手続きまでの流れ、費用の考え方、利用者の声が揃って、はじめて問い合わせに変わります。
MEOは、Googleマップで「近くの葬儀社」などと検索された際の表示順位を上げる施策です。急ぎの場面では、有名な遠方の会社よりすぐ動ける近場が選ばれます。営業時間、会館や祭壇の写真、口コミへの返信、対応エリアの明記。地味な基本情報の整備が、地図経由の問い合わせを押し上げます。
事前検討層にはSEOやオウンドメディアが向いています。「家族葬 費用 相場」「喪主 やること」「訃報 伝え方」など、不安をテーマにしたコラムを積み上げると、平時の接点が育ちます。「あのサイトの会社に相談しよう」と思い出してもらえるかどうかで、中長期の差がつきます。
オフライン広告は時代遅れに見えて、葬儀業界では今も大きな役割を担います。葬儀は人生で経験する回数が限られるため、日常的にネット検索される対象にはなりにくく、生活圏で目にしている社名こそが、いざというときの候補になるからです。
会館看板や地域チラシで押さえたいのは、一目で伝わる情報設計です。遠くからでも読める社名、業種がひと目で分かる「葬儀」の表記、所在地や会館の位置、家族葬・一般葬のプラン価格。この4点が揃っているか、一度自社の広告を点検してみる価値があります。
チラシも、価格表を並べるだけでは捨てられます。「事前相談で何が聞けるか」「家族葬の流れ」「よくある不安とその答え」を載せれば、保管される資料に変わります。地方では新聞の訃報広告(死亡広告)も根強く、地域特性に合わせた選択が欠かせません。
媒体を揃えただけでは成果は出ません。伸びている葬儀社に共通するのは、認知から成約、CRM(顧客関係管理)までを一枚の設計図に落とし込んでいる点です。ここから、その設計を支える3つの考え方を見ていきます。
JTBD(Jobs To Be Done)は、顧客が本当に片付けたい用事は何かを捉えるフレームです。葬儀社に連絡する人の用事は、「安い葬儀を買うこと」ではありません。
突然の状況で失敗したくない。親族や菩提寺と揉めたくない。何を決めるべきか整理したい。費用の見通しを持ちたい。故人をきちんと送れたと納得したい。こうした複合的な不安の解消こそが、問い合わせの本当の動機です。
視点を変えると、広告文も変わります。「家族葬○万円〜」とうたうより、「突然でも慌てないための事前相談」「ご家族に合った送り方を一緒に整理」といったメッセージのほうが、実際の悩みに届きます。実施された葬儀の50.0%が家族葬という調査結果もあり、多数派となった検討層に価格だけを見せても、反応は薄いのが実情です。
出典:鎌倉新書「【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年)」
広告のクリック先となるLPは、成果を大きく左右します。
緊急層向けのLPでは、電話番号、24時間対応、対応エリア、搬送可否、概算費用の考え方をファーストビューで提示する。これだけで問い合わせへの転換率は変わります。事前相談向けなら、「何が相談できるのか」「無理な営業はされないか」「どの段階の人が利用していいのか」を丁寧に示し、心理的なハードルを下げます。
もう1つ重要なのが料金表示の透明性です。見積もりより支払い額が増えたと回答した人は33.7%、増えた人の差額は平均19.5万円というデータもあります。基本料金に含まれない項目や割引の条件が曖昧だと、申し込み直前で信頼を失います。
出典:鎌倉新書「【第1回】葬儀費用の実態と納得度調査(2025年)」
今すぐ問い合わせてくる層だけを追い続けると、顕在層の取り合いから抜け出せず、獲得単価は上がり続けます。
そこで重要になるのがナーチャリングです。資料請求した人、相談会に参加した人、終活情報に関心を示した人といった潜在層に段階的に情報を届けることで、「いざというときの第一候補」として覚えてもらえる状態をつくります。
手段はメール、LINE、紙の冊子、相談会、会館見学など多様です。終活の基礎、家族葬と一般葬の違い、喪主準備のチェックリスト、訃報連絡の文例など、段階に合わせてコンテンツを使い分けます。葬儀は検討から成約までの期間が読めない商材だからこそ、継続的な接触の価値が大きくなります。
葬儀社の広告担当者から寄せられる悩みには、驚くほど共通点があります。
オースタンスでは、こうした課題を抱える複数の葬儀企業への支援を進めています。なかでもある支援先では、以下の成果が出ました。
改善の鍵は、次の4領域を同時に動かしたことです。

現状(どのチャネルで誰を獲得し、どこで離脱しているか)と、理想像(緊急層・事前層それぞれの成約までの流れ)を一枚の設計図で見える化しました。ここが曖昧だと、個別施策はどれだけ磨いても噛み合いません。
SEO、リスティング広告、MEO、オウンドメディア、チラシを、緊急層・事前層それぞれに合わせて再設計。緊急層向けLPはスピード対応と搬送可否を前面に、事前層向けLPは家族葬の基礎知識と事前相談のメリットを軸に据え、訴求と導線をくっきり分けた結果、CPAは約3分の1まで下がりました。
成約率は、問い合わせ後の現場トークで揺れます。コールセンターと営業のトークスクリプトを見直し、SFA(営業支援システム)の運用も整備しました。
たとえば家族葬から一般葬への引き上げ提案では、リスクを誠実に伝える対話が効果を発揮します。「故人が顔の広い方の場合、身内だけで済ませた後、何か月にもわたってご自宅へのお線香あげの来客が続き、ご遺族が疲弊してしまうケースがあります」。こう伝えたうえで、家族の状況に合った形を一緒に考える。この姿勢が、単価と満足度を同時に押し上げます。
WEB流入したリードに、ステップメールやLINEで継続的な接触を設計しました。温度感の高い層には相談会や見学の案内を、平時の検討層には終活情報を届ける。段階に応じたコミュニケーションの積み重ねが、成約率を底上げします。
自社の広告運用が今どの水準にあるのか、以下の3つの問いで振り返ってみてください。すべてに「はい」と言えない場合、改善の余地が残っています。
Web広告に偏っていないか。MEOは整備されているか。会館看板や地域チラシで日常的な接点はあるか。遺族はいざという時、完璧な比較ではなく「知っている会社」「近くの会社」「すぐ連絡できる会社」を選びます。地域で自社名が見聞きされていなければ、想起の土台が弱いと疑う必要があります。
安さで問い合わせを集め、あとからオプションで単価を上げる。この順番は不信感を生みます。そうではなく、「どの形式がどんな家族に合うか」「省いていい部分と省いてはいけない部分はどこか」を最初から丁寧に説明する。家族葬を入口に、家族の状況次第で一般葬への引き上げを提案するリスク提示型のアプローチが、納得感のある単価向上を支えます。
電話がすぐつながる。見積もり条件が明確である。質問に即答できる。この状態が整っていなければ、広告を磨いても成約率は伸びません。広告改善は、電話対応、説明品質、アフターフォローまで含めた現場運用全体の課題です。
葬儀の意思決定は、喪主一人では完結しません。配偶者、子世代、親族との関係のなかで揺れ動く「関係性消費」であることが、葬儀マーケティングの出発点です。
これからの競争軸は、「安さを見せること」から「安心して相談できる関係をつくること」へと移っていきます。緊急層にはリスティング広告やMEOで素早く届く導線を、事前検討層にはコラム、チラシ、相談会、資料請求で平時から接点を積み重ねる。その先にわかりやすいLP、誠実な見積もり、丁寧な説明、継続的な情報提供を置く。この一気通貫の設計がそろってはじめて、ポータル依存を抜け、自社を指名で選んでもらえる状態に近づきます。
オースタンスは、43万人を超えるシニア会員が集う「趣味人倶楽部」の運営と、累計3,000名以上のデプスインタビューで培ったシニアインサイトをもとに、葬儀・終活領域のマーケティング戦略から現場の営業フロー改善までを一貫して支援しています。
自社の広告運用を見直したい、事前相談の導線を強化したい。そんな課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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