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公開日: 2024.10.22
更新日: 2024.10.24
前記事では、CRMのStep1“注文時UIUX”について具体事例とともに提示した。顧客との最初の出会いを経て、D2Cというチャネル特性を活かした顧客との多重接点の中で、いかにして“ブランド・エクイティ”を強固にしていけるかが命題になる。個別の特徴的な活動を紹介していく前に、まずは健康食品×シニアにおけるCRMを成功させる要件について説明し、その後に各要件を満たす主な活動について紹介していきたいと思う。
前記事の通り、CRMの目的はLTV向上にある。そして、LTVを向上するためには“ブランド・エクイティ”という考え方が重要になる。マーケティングの大家D.A.Aakerによると、“ブランド・エクイティ”は4つの要素で構成されている。簡潔に下記にまとめる。
特にCRMでは、注文時UIUXを経て既に購入に至っているため、ブランド認知、ブランド連想、知覚品質はある程度持ち合わせていると言える。そのため、CRMにおける“ブランド・エクイティ強固にする目的は“ブランドロイヤリティ”向上となり、その他の要素も必要に応じて補強していくことが重要になる。これらは、商品やサービス利用者を中心にした調査により、自社と顧客の関係性における強みや弱みを抽出し、弱みを補強していくことがマーケティング活動の中心になる。しかし、購入翌日からいきなりオンライン・コミュニティなどに招待してもそう簡単に顧客は入会してくれない。顧客との深い関係性を構築するためには段階論があるという考え方が、こちらもマーケティングの大家K.L.Kellerが提唱した“ブランド・エクイティ・ピラミッド”だ。
このピラミッドも端的に説明すると、 ・ブランドとの関係性が強固になるためには、4段階のステップがある ・ステップは、6つの要素で構成されており、左脳的・理性的なアプローチと、右脳的・感情的なアプローチの、それぞれを満たす必要がある それぞれのステップと構成要素について簡潔に紹介していく。なお、詳細は「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」を参照されることをオススメする。(大変高価で重厚な書籍だが。)
Step1)ブランド認知
Step2)ブランド連想
Step3)知覚品質
Step4)ブランドロイヤリティ
さて、ここまで教科書的な内容を説明してきた。前述の通り、D2CはリピートモデルとなっておりStep4)ブランドロイヤリティの段階に到達することが重要である。そこまで到達すれば、リピート購入しているブランドの継続はもちろんのこと、同一企業や同一ブランドの他カテゴリー商品の購入(=クロスセル)、同カテゴリーの高価格帯商品へのスイッチ(=アップセル)、親族や友人などに対しての推奨などが発生する確率が高まり、結果としてLTVが向上していくだろう。ただし、“ブランド・エクイティ・ピラミッド”はB2Cのような小売などを中心にした考えであり、D2Cリピートモデルを考慮できてはいない。また、健康食品の市場特性を踏まえると独自のピラミッドモデルを形成すべきではないかと考え、以下にて説明する。
前述の“ブランド・エクイティ・ピラミッド”からの変更点を中心に説明し、B2Cで販売している日用消費財の代表として飲料カテゴリーと比較して解説していく。
独自ポイント①企業に対する広く深い認知(Corporate Salience)が前提になる
健康食品の場合は、単純にブランドだけで三角形が構成されている訳ではなく、企業に対する広く深い認知が前提として必要になることが多い。その理由は、二つあると考える。 理由の一つ目は、健康食品、とりわけサプリメントが薬に近い知覚品質であることが挙げられる。身体の中に成分を取り込むこと、飲用時の剤型、身体の不具合を改善する飲用目的などが近しいポイントである。薬の場合は、特定の病気に対して、信頼している医者から処方されることで、安心して飲用することができる。健康食品やサプリメントにおいても、身体の中に成分取り入れ、ハードカプセル、粒、粉末などの剤型で、特定のお悩みに対して改善予防を目的に飲用する。メタ化して捉えると薬とサプリメントが類似の顧客体験であることがご理解いただけたのではないだろうか?そう考えると、薬が信頼している医者から処方されるように、健康食品やサプリメントは、信頼できて安全性の高い企業からから購入することが選択基準になると考えられるため、企業認知や企業連想が手に取る理由の一つになる。 理由の二つ目は、出費総額の高さが挙げられる。リピートすることで効果実感できる商品であるため、購入初回に提示される割引価格や無料とは裏腹に、年間での購入金額で見ると家計の中でも大きな出費を占めることが多い。そのことを消費者も理解しているため、先々の高額な出費に見合うほどの効果が本当にあるのか?信頼できる商品なのか?といった懸念が大きくなる。 飲料ではブランドだけを認識していて、どの企業が出しているかを知らないケースも多いのではないだろうか? B2Cは販売棚に限りがあり、参入障壁が築かれているため、見知らぬブランドが販売棚に置かれることはそもそも少ないだろう。そういった状況でも投入されるいくつかの見知らぬブランドの商品であっても、1回のみで購入を終えることが多く低価格であるため、どの企業が出しているのか?などと用心して買う必要が無いのだ。
独自ポイント②ブランドではなく企業が提供する実利(Practical Profit)と人情(Humanity)が存在する
どれだけ信頼できる企業から購入したとしても、本当に高額な出費に見合った価値があるのか?といった疑念を持つことから付き合いが始まることには変わりない。そういった疑念や不安を払拭するために、リピートし続けることで経済的なメリットを感じられる“実利”と、企業のストーリーや企業の中にいる人からのメッセージなど、人間らしい部分を感じられる“人情”が、D2Cリピートモデルでは重要になる。 飲料の場合は、リピートすればするほど経済的なメリットなどを得られることはない。何度も購入することでシールが溜まり、景品と交換できるキャンペーンなどもあるが、購入すればするほど、その商品の価格が安くなることなどは当然ない。また、企業のストーリーや企業の中にいる人が見える機会はほとんどない。顧客との接点はCMなどの広告宣伝が中心になっており、数秒で提供できる情報には限りがあるため、“人情”を感じさせることを主眼に置くのではなく、ブランドのベネフィットを伝達することに主眼を置くのが当然である。
シニアで重要なポイント
シニアは、特に“企業認知”と“人情”を重視する傾向にある。シニアは若者以上に誰から買うのか?を重視する傾向にある。自分達の世代が騙されやすい世代だとニュースなどから認識しており、本当に信頼できる人から買っているのか?買った後も信頼に足る人なのか?を常に意識している。もちろん知らない企業からの購入は不安でなかなか手を出せないだろう。また、企業という大きな存在だけでは顔が見えないため不安は残る。スーパーマーケットで生産者の顔が見えるように、企業の中にいる人の顔が見えることで残った不安を払拭することが大事になる。シニアをメインターゲットにした企業におけるCRMの活動では、漏れなく“企業認知”と“人情”を大切にしている。
前述の通り、CRMは企業認知(Corporate Salience)、ブランド認知(Brand Salience)、機能(Performance)、情緒(Imagery)、実感(Judgement)、気分(Feeling)、実利(Practical Profit)、人情(Humanity)、共感・愛着(Brand Resonance)の9つの要素に分解される。この9つをそれぞれ満たす活動を簡単に挙げていく。
要素①企業認知(Corporate Salience)
要素②ブランド認知(Brand Salience)
要素③機能(Performance)
要素④情緒(Imagery)
要素⑤実感(Judgments)
要素⑥気分(Feelings)
要素⑦実利価値(Practical Profit)
要素⑧人情価値(Humanity)
要素⑨レゾナンス(Resonance)
次記事では、それぞれのCRMにおける手段について、具体的な工夫事例も踏まえて紹介していく。
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