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公開日: 2024.09.18
更新日: 2024.09.19
オースタンスでは健康食品メーカーの支援、とりわけD2Cチャネルを有効活用するメーカーのCRM(Customer Relationship Management)領域を支援することが多い。広告宣伝などを見てLPもしくはECサイトに訪問いただき注文する際の“注文時UIUX”からCRMは始まっている。注文後は、出荷配送品質、出荷同梱物、F2転換販促活動などの一連の顧客体験と、ロイヤリティPGMなどの基盤でCRMは構成されている。
健康食品メーカーの中で、大手食品メーカーから派生した健康食品事業会社、老舗健康食品通販会社、新興健康食品会社など、計16社の商品を実際に購入して各社の工夫ポイントを抽出することにする。
今回はCRMの入り口となる“Step1 注文UIUX”について取り上げていくことにする。
CRMの目的は、顧客生涯価値LTV(Life Time Value)を向上させることだ。LTVは様々な定義や計算式が存在するが、今回下記のように構造化する。
注文時UIUXにおいては、既に決まった商品を購入しようとECサイトに訪問しているため、いきなりクロスセルやアップセルを狙うことは難しい。そのため、解約防止やスキップ防止につながる方策を優先することが望ましい。
解約防止やスキップ防止につながる方策として各企業が行っている方策をまとめる。(※) ※実態はより詳細な案内がECサイトの階層深くにあるのかもしれないが、あくまで顧客目線で拾える情報のみをピックアップしています
1位:お届け方法(13社/16社) 1回のみ < 定期お届けコース
サブスクリプションビジネスの基本であり、購買継続の意思決定回数を減らすことで解約を防ぐ方策である。この定期お届けコースに加入してもらうために各社工夫をこらすのである。
定期お届けコース促進のために、初回のみ割引を提案することで移行率を高めようとしている企業もある。また、この割引をよりわかりやすく表現するために、1回あたりの価格差や1年間続けた際の価格差を表現することでお得さを可視化する工夫をしている企業もあった。
送料無料も割引と同様に必須の案内だろう。毎回の配送にコストがかかると大きな出費にもなり得る。また、Amazonや楽天などでも送料無料が基本になりつつあるので、健康食品の配送においても同様のサービス品質を求めることは必然と言えるだろう。
多くの人が当たり前のように選択していると表現されると損失回避バイアスが働き、多い選択肢を選んでしまうのが人間だ。その際に注釈をちゃんと見ていただきたい。現在購入している人が選択している購入方法のことが多く、最初の注文時に選択する購入方法ではないことが多い。生存者バイアスを上手く活用している。
会社が保有しているオリジナルキャラクターグッズ、サプリメント持ち運びケースなどをプレゼントするケースが多い。また、3回連続でお届けするといったサービスが多く、いわゆる健康食品の死の谷“F2転換率”を超えるための方策としても活用していると考えられる。
クロスセルも狙ったサービスだ。もちろんクロスセルを狙うことで購入単価が上がるのは当然だが、クロスセルをしている人は解約しづらいことも、このタイミングでサンプル品を送付する狙いだろう。
2位:サイズ(10社/16社) 通常サイズ < お徳用サイズorまとめ買い
サプリメントは継続して効果が出るため、お徳用を提案することが多い。同時に、お徳用を選択してもらうことで解約しづらくなる。サイズの中では特殊な表現もある。
1ヶ月分の商品を無料や半額などの割引で経験した顧客の方が継続しやすいといったデータもある。これは、じっくり1ヶ月間お試しをすることで効果実感した人が継続するため必然の結果とも言えるだろう。ただし、当然だが販売促進費や出荷配送費がかかるため、本当に採算が取れているかまで検証する必要があるだろう。また、ECサイトに訪問する時点で購入意向が高い顧客とも考えられるため、ECサイト上で提案が必要かどうかは疑問だ。
3位:商品包装(2社/16社) ボトル < パウチ
ボトルは箱などで配送せざるをえず、配送資材が大きくなり出荷配送費が高くなる。一方で、パウチになると封筒などでの配送がかのうになり出荷配送費が低くなる。またパウチの方が持ち運びやすさもあるため継続しやすくなる。
その他:購入回数(1社/16社) 縛りなし < 複数回縛り
購入回数の複数回縛りは、消費者庁に問い合わせが多い事案になりやすい。そのため、徐々に採用されなくなって来たが、大幅な割引により選択されることも考えられる。
その他:粒数(1社/16社) 粒数多 < 粒数少
粒数は少ない方が続けやすい。特にシニアになると薬と併用して飲用することが多いため、1日に摂取する粒数が多い。それにより嚥下が発生したり、飲み疲れを起こしたり、解約する理由になってしまう。解約する理由を取り除くことは重要だ。ではどうやって粒数を変化させているのか?主成分の量は変更せずに周辺の副成分の量を調節することで粒数の減少を成功させていた。
その他:決済方法(1社/16社) 口座振り込みor代金引換 < クレジットカード決済
現役世代はクレジットカード決済の方が圧倒的に便利で利用するが、シニア世代は個人情報の観点などからクレジットカード決済を嫌う人はまだまだ多い。口座振り込みや代金引換はその場でお金を準備する必要があるため、毎回この金額に見合っているのか?を問い詰め直す機会になってしまう。定期お届けコースを選択してもらっているにも関わらず、毎回の注文で支払い是非を検討させるのは本末転倒だ。
このようにたくさんの方策を組み合わさる中で、オススメの購入方法を選択してもらう必要がある。ここからは注文画面、買い物かご、個人情報入力、注文完了画面と顧客Step順に提案方法を分析していく。
注文画面は、お届け方法とサイズの組み合わせで選択させることが多い。いくつかパターンが見えて来たため、定量的な結果とともに紹介していく。
1位:上下順列式(7社/16社)
顧客に選択させたい選択肢を上位に表示する方式。さらに以下のパターンに分解できる。
2位:左右順列式(5社/16社)
顧客に選択させたい選択肢を左右に表示する方式。顧客への提案力は少し弱いか。
3位:パネル選択式(3社/16社)
パターンを複数提示し、最適な組み合わせを強調して顧客に選択させる。
4位:ドロップダウン選択式(1社/16社)
SKUが多数ある場合は、選択肢をドロップダウンから選択して押下させる。
顧客に瞬間的に選択してもらうためには、オススメがすぐに分かる表示が良いだろう。その意味で、FVからスクロールしていくECサイトの体験では上位にオススメを表示させる上位順列式を表示させる企業が多いのは必然だろう。上位順列式で表示したとしても選択肢が多すぎると意味がないだろう。行動経済学で言うところの“選択回避の法則“と呼ばれる現象が起きてしまうからだ。特にこの現象はシニアにおいて顕著に現れるため、特にケアすべき事項と言えるだろう。
上位順列式を採用している8社の選択肢表示数は、平均3.8、最小値3、最大値5となっており、3〜4が基本なのだろう。オススメは“切り替え表示式”だ。選択肢を意図的に減らすことで選択しやすくなるからだ。そして表示された項目を“松竹梅効果”を踏まえて竹の購入を促進することでオススメしたい注文が最大化できるのではないだろうか。
選択肢を減らす方法は“切り替え表示式”以外にもある。とある企業では上位から1回のみ×お試しサイズ(1ヶ月分)、定期お届けコース×お徳用サイズ(2ヶ月分)、定期お届けコース×お徳用サイズ(4ヶ月分)、1回のみ×通常サイズ(1ヶ月分)の4つしか表示されていないケースもあった。1回のみで複数購入はできず、定期お届けコースを1ヶ月分で購入することができない。ただ、活動実績などから削ぎ落としていったと考えられる。もちろん、不便さに対する問い合わせが一定数来ている可能性はあるものの、オススメしたい商品の購入につながっていると考えられる。
また上記の複雑さを補うために、チャットボットを活用して不安を払拭しようとしているサービスも見受けられた。
買い物かごは、入れたまま放置してしまうことも多く必ずしも一連の時間軸で進むとは限らない。その意味でリマインド的に再度案内を活用することができる。
1回のみのお届けで注文すると、定期お届けコースへの選択を改めて後押しするケースがある。ここで、定期お届けコースを選択した方が良い理由として、利用率やプレゼントなどの追加情報を提示していた。
化粧品のサンプルを選択できるようにしている企業もあった。クロスセルを狙った活動であろう。
このタイミングで1品追加を提案する企業もあった。サンプル以上にクロスセルを狙った活動だ。
ここまで到達できれば企業は更なる打ち手を投入していた。
注文完了後に、顧客のお悩みや認知経路などを収集し、マーケティングや今後のクロスセル案内に活かそうとアンケートを取得する場合も多い。
ECサイトのマイページと連携して配送日時を変更したり、キャンペーンの案内を送付したり、LINEを上手く活用する企業もある。友だち追加させることで、注文から着荷までの期間にモチベーションを下げないために接点を持ちたいのだろう。
今回は注文から注文完了までの一連のStepにおいて、注文のしやすさとLTVを高めるための方策をどのようにして両立させているのか?を分析してきた。各社ともに注文画面でのこだわりはあるものの、買い物かご、個人情報入力、注文完了画面は有効活用できている企業が多くなかった。もちろん注文のしやすさを考慮して敢えてLTVを高める方策は入れていないことが考えられるが、方策を入れている企業の注文が注文しづらいと感じることはなかった。
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