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公開日: 2024.09.02
更新日: 2024.09.04
コロナ禍も落ち着きを見せ、国内外問わず旅行へ行かれる方も増えているのではないでしょうか。娯楽体験としての旅行は、性年代を問わず魅力的なコンテンツです。しかし、そんな旅行という娯楽は年齢を重ねていくとともに自然と制限がかかってしまうものです。仕事、結婚、子育てなどライフステージの変化が起こるにつれて自由気ままな旅行は難しくなっていくのは想像に難くないのではないでしょうか。 その変化の一つに、加齢とともに生じる身体的健康の低下、というのも挙げられるのではないでしょうか。若い頃と比べると、「遠方に旅行にいけない」「旅行中の徒歩が大変」「交通機関の乗り継ぎは最小限にしたい」など、シニアに突入すると旅行の当たり前が変化していくと言えるでしょう。 従来のシニア向けの旅行サービスといえば、バスツアーのようなパッケージ化された旅行が一般的かもしれません。ですが、シニア自身も大きく変わってきています。アクティブシニアの登場、人生100年時代への突入など、シニアの健康寿命の延伸に伴う旅行体験も変化してきているのではないでしょうか。 そこで今回は、シニアの旅行ニーズがいまどのような変化の兆しを示しているのかを調査・分析してみることとします。シニアの旅行ニーズを細分化していくことで、今後シニアに対する旅行の提案の仕方のヒントがわかるかもしれません。
まず、今回のテーマであるシニアの旅行のいまを知るために、以下を前提として調査対象を検討することにしました。
1.については、シニア世代の前提であるフレイルの影響を踏まえ、どのように旅行先を決めているのか、その判断基準を示します。今回はフレイルを持ってなお「アクセスしやすい場所」、そしてフレイルがあるが故に「アクセスしにくい場所」の2軸に分類しています。
ちなみにアクセスしやすい/しにくい場所の定義は、旅行目的地への距離ではなく、目的地に行くための交通手段の豊富さや簡便性で行っています。アクセスしやすい場所は、目的エリアの主要駅からバスで一本の場所や、徒歩で行ける距離、観光周遊バスのエリア内の場所という定義を行っています。アクセスしにくい場所とは、上記の手段を用いても乗り換えが必要 / 移動に1時間以上を要する / 最寄りの駅やバス停から徒歩で数十分かかるなど、身体的にも負担が大きい場所と定義しています。
2.については、同世代の友人 / 世帯を跨いだ集団(ex.娘夫婦・孫など) / 一人旅or配偶者という分類を行い、それぞれの旅行形態において生じる課題や旅行する際に重視していることを明らかにすることにしています。
これらの軸を掛け合わせることで、それぞれ旅行形態が大きく異なっていくのではないか?と仮説を立てています。そしてその旅行形態ごとに異なる、または共通するニーズを明らかにしていくために、旅行への関与が高いシニアたちへ調査を行っていきます。
調査人数:20名
必須条件
・50-75歳の男女であること
・世帯年収1500万円以上あるいは保有資産3000万円以上
その他条件(いずれかに該当必須)
・若い頃から旅行が趣味であること
・シニアになってから旅行が趣味になっていること
旅行に関与の高いシニアたちの調査から、大きく以下のようなニーズに分類することができました。
1.旅行を充足させるための状況群
2.旅行を安全に遂行するための状況群
旅行に対してシニアは、アクティブ化していくシニアの暮らしをより豊かに、なおかつ残された時間の中で精一杯旅行を楽しむために、1.のような積極的なニーズを持っていることがわかりました。片や、2.のように、最低限まずは旅行を楽しめることを優先する消極的ニーズがあることも同時にわかってきました。
1.については、従来のシニア像のような、旅行は友人と和気藹々と楽しみたいというだけでなく、充実した旅行体験を実現させるためのニーズと言えるでしょう。2.については、一見するとフレイルによる旅行への不安という括りに見えますが、細かく見ていくとその不安につながる要因も細かく細分化できることがわかります。このように、シニアに対する旅行の提案と言っても、さまざまな訴求の可能性が考えられるのではないでしょうか。 以下では、上記の5つのニーズの詳細を細かく紹介していきます。
1-a:パートナーとの時間に新規性を作りたい
旅行といえば、遠出を楽しむ目玉イベントとお考えになるかと思います。 しかしシニアにとっては、仕事をリタイアし、子育ても終わり改めてパートナーとの時間をゆっくり楽しむことができる時間の過ごし方としての旅行、という位置付けでもあるのです。そのため、シニアにとっての旅行はある種日頃のデートと求めていることは変わらず、配偶者と過ごす時間をいかに楽しむかという目的も含まれています。日頃の近場で配偶者と過ごす時間に、何かしらのマンネリ感を感じているシニアが、フレッシュな体験を求めて少し足を伸ばす。そんな体験に価値を見出しているようです。 このニーズについては現状まだまだ解決策も少なく、そもそも「シニアのデート」という価値観が浸透していない可能性もあるでしょう。若年層がSNS等で様々なアカウントからレコメンドを受けているのと同じように、シニアもスマホやSNSの普及率は伸びて来ています。しかし、シニアで積極的に旅行の発信をしている層はまだまだ伸びていく途上と言えますし、LINEのような連絡ツール以外のSNS、たとえばInstagramのようなツールになると普及率はこれから伸びていく段階でしょう。そうなると自分と同世代の夫婦やパートナーの旅行体験などへのアクセス経路も限られているのかもしれません。 当社の過去調査を見ると、Instagramの利用率は18%前後と5人に一人未満の数値であることがわかります。このように他人のライフスタイルを覗き見するような習慣が若者と比べるとまだ一般化していないと言えそうです。
そのように考えると、シニア夫婦がふらっと楽しめるような、小デート感覚の旅行体験のようなサービス機会に需要があるかもしれません。
1-b:以前と同じ場所に行って思い出を更新したい
大前提として、このニーズを持つシニアは、とにかく元気な内に行けるだけ旅行に行きたい、というニーズが顕著で、若い頃はもともと旅行に頻繁に行っていたシニアたちです。そのため自分で行き先も調べるし、現地の食や名所を楽しむことに重きを置いています。 このようなシニアが歳を重ねてから改めて旅行にかけるモチベーションは、昔行ったことのある場所や自分のお気に入りの場所に足を運び、昔とは違う楽しみ方を発見するということです。たとえば、まだ元気だった若い頃はアクティブに、観光地をめぐることを重視するという楽しみ方をしていた一方で、歳を重ねて身体疲労が大きくなると、現地の雰囲気や名産をゆっくり楽しむなど、そのスタイルの変化によって改めて思い出や記憶を更新しているようです。 こうした思い出を塗り替える、といった行動も、その旅行スタイルが全く違うことで楽しみ方を変えることができるためポシティブに受容されるのではないかと考えられます。
1-c:これまでの人生で未開拓の場所にいき新しい思い出を作りたい
1-bとは真逆のニーズも確かに存在しています。このニーズを持つシニアは、まるで若者のように年齢に関係なく「わがままな旅行」「冒険のような旅行」を楽しみたいと考えているのです。その考えに則って、このニーズを持つシニアはバスツアーのような決められたプランも抵抗があり、むしろ疲れてしまうとすら感じているという発言もありました。自分が過去に訪れていない場所で、その土地ならではの体験を楽しむことに喜びを感じたいと考えているようです。そしてこのニーズを持つシニアの一番の特徴は、身体的理由に縛られず、アクセスが難しい場所や旅程が長い場所へも積極的に旅行に行くということ、そしてそのために一人で旅行に行くということです。 一人で行く理由は、シニアが他人と旅行に行く=同世代との旅行になりやすく、その場合は自分の体調だけでなく同伴する友人の体調や体力を考慮しなければならない、という外部要因による課題が生じてしまうためです。こうしてみると、シニアも一人でフットワーク軽く旅行にいく、いわゆるフッ軽旅行のようなスタイルが求められていると言えるでしょう。
2-a:体調の変化に対して融通が利く旅行を設計したい
続いては消極的ニーズについてご紹介します。 このニーズは主に、バスツアーのような従来のシニア旅行のテンプレートに近い価値観です。年齢とともに泊まりがけの旅行にいく体力がなくなってくることと、自分が迷惑をかけてしまうかもしれないといった要因から、親しい間柄での旅行だとしても抵抗が生まれていると考えられます。特に同世代の友人との旅行では、各々が歩行能力や体力の低下などのリスクを抱えているため、最初から計画されていて安全かつ、「坂が多いのでバスで待機する」といった融通が利くという点を重宝しているという発言も目立ちました。 しかし一方で、バスツアーでの旅行に関する不満もあるようで、今回調査したシニアたちは、元来旅行好きという属性があるため、歳を重ねて時間があるにもかかわらず、新しいところにいけない / バスツアーだとありきたりな場所しか回れない、といったジレンマも抱えているという悩みも吐露しています。バスツアーで安全に旅行を楽しむ、しかしそれでは日帰りプランや画一的なパッケージしか享受できない、このジレンマを解消していくことに機会があるのではないでしょうか。
2-b:友人や家族に迷惑をかけずに旅行したい
このニーズについても、シニアの旅行における大前提と言えるかもしれません。 たとえば家族との旅行の場合、旅行の意思決定は自分ではなく子供や孫の要望を優先するようになるケースがあるでしょう。そうなると、自分が旅行を楽しめなくなることよりも、自分のせいで家族に迷惑をかけてしまうことへの不安を念頭に考えてしまうそうです。 そのため、家族旅行においては自分で旅行を計画することは忌避する傾向にあります。それは事前に旅行プランを入念に作ったとしても前日、最悪の場合は当日に自分の体調が崩れる可能性を否定できないためです。シニアがスマートフォンを使いこなせずサクサクと旅行プランを練れない、といったデジタルリテラシーとは関係なく、若い世代と比べて予測不能なケースが起こりうるからこそ避けていると言えるでしょう。 では家族が計画してくれれば安心かといえば、それもまた違うようで、家族が練ってくれたとしても最後の最後で裏切ってしまいそう、という自己に対する不信感も拭えないという発言もありました。 以上のことから、このニーズを持つシニアは新しい旅行先を選ぶのではなく、昔行ったことのある場所などに繰り返し訪れるようになっていました。経験のある場所であれば予定も立てやすく、トラブルの変数を最小限に留められるからだと考えているようです。
アクティブシニアの旅行という観点から、ニーズを細分化してきました。いずれのニーズも若者とは違う、シニアならではの背景があると言えるのではないでしょうか。その中でもどのニーズにも共通していたのは、年齢とともに体力の低下などフレイルの影響は避けられないということです。そのため旅先での楽しみ方も、身体に負荷をかけないよう、「たくさん観光名所を巡りたい」から「ホテルでゆっくり過ごす」「ホテル近辺のエリアをのんびりめぐる」にシフトしていく傾向にあります。また、旅行の最後にお土産を買うといった旅行定番の行動も、荷物が増え身体的な負荷がかかるという理由で消極的という発言もありました。ですがアクティブなシニアが登場しているのも事実とされる中で、保守的な旅行だけではない冒険的な旅行が新たに登場しているということもニーズから提唱できると考えられます。以上を踏まえると、これからのシニアにとっての旅行体験の良し悪しとは、どれだけ身体的衰弱に対する不安を拭いながら、いかに精神的充足感を高められるか?この一見矛盾するようなニーズをどう両立させていくかが重要になっていくのかもしれません。
シニアむけ、特にアクティブシニアむけの旅行プランに関して、上記の調査分析結果より一例としては以下が考えられそうです。
アクセス・ハードな旅行プラン
身体的障壁を乗り越えて新しい体験を求めるシニアに対して提供するプラン。
アクセスが難しい(交通機関の乗り継ぎが多く到着までに労力がかかる)場所に安全に訪れることができるプランに機会があるのではないでしょうか。
そしてこのプランの場合は、友人や家族での複数人旅行だけではなく、一人旅を支援するという目的でのプランに特に価値がありそうです。
一人で自由気ままに旅行したい、でも何かあった時に誰にも頼れないというジレンマを抱えるシニアに対して、よりアクティブに旅行を楽しむ体験を支援することに需要が生まれるのではないかと考えられます。今回紹介した「旅行」を趣味としている方が趣味人倶楽部には多く登録されています。
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