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公開日: 2024.08.02
更新日: 2024.08.02
みなさまは美容への関心はお強いでしょうか?こちらのサイトをお読みいただいている方の中には、美容感度が高い方も、そうでない方もいらっしゃるかと思います。 2024年現在、美容=女性、若者という考え方は一般的ではありません。メンズメイクやジェンダーレスファッションの登場など、性別の垣根を越えて美容は広く浸透しています。そしてそれは年代という垣根にも同じことが言えるでしょう。 数年前からアクティブシニアという言葉が使われ始め、こと人生100年時代においてシニア世代も運動や旅行を楽しむようになってきています。それと時同じくして、シニアの美容感度もさらに高まってきているのです。ですが実際にそうなのか?と言われると読者の皆さま自身もまだその年代ではない方もいらっしゃるでしょう。身近な存在ではご自身のご家族を見ても、ピンとこない方もいるかもしれません。 「むしろシニアになっていくにつれて美容感度は下がるものでは?」そう考える方もいるでしょう。そこで今回は、シニアの美容意識を、シニア世代の中でも特に美容感度の高い方々からその変化を探ることにします。 今回ご紹介するシニアの美容のこれからのヒントが、みなさまの商品開発・サービス開発の一助になれば幸いです。
まず、今回のテーマである美容感度の高いシニアたちを特定するためには、以下の観点で調査対象者をイメージすることが重要だと考えました。
1に関しては、健康寿命の延伸に伴い心身ともに健やかなシニアが増加していく中、仕事に限らず旅行やその他のアクティビティに精力的になっています。言い換えると、当人がもつさまざまなコミュニティの友人・知人関係が活性化していると考えられます。自分1人や家族ではなく、友人知人のような第三者との接触機会が増えることで、美容に対するこだわりにも変化が見られるのではないか?という調査仮説を設定しています。
続いて2に関して。シニアも再雇用制度の活用や、リスキリングによるリタイア後の就職も可能になっています。これにより老後資金は年金だけに頼らずとも、自身で稼ぐ力を持ち続けることになり、可処分所得が増加していくと考えられます。こうした観点からもシニアが美容にかける金額も増加していくのではないか?と仮説を設定しました。
以上の観点を踏まえ、今回の記事では総資産に余裕があり、美容に関連する情報収集などの行動が活発なシニアたちを対象に調査を行っています。
調査人数:20名
必須条件
・50-75歳の男女であること
・世帯年収1500万円以上あるいは保有資産3000万円以上
・美容の行動意識が高い人(※詳細は割愛)
緩和条件:世帯年収1000-1500万円
今回、*美容感度の高いシニアの方々にお話を聞き、その課題を抽出しました。
*美容感度が高いシニアの定義=TV番組やSNSで能動的に情報収集を行うことが多く、シニア向けの商品紹介に止まらず若年層向けの情報への感度も高い。信頼のあるブランドの新商品を積極的に試したり、美容医療に対しても抵抗が少ない層。背景として、仕事や友人付き合いなどで外部とのコミュニケーションが多い。
共通する悩みとしては以下の4つに分類されます。 ①髪のハリ・コシの低下 →年齢とともに髪が細くなったり、乾燥してしまいうまくまとまらない ②白髪の増加 →白髪が増え、定期的に白髪染めを行うが根本的には解決できない ③肌のしわ・しみ・たるみ →化粧品で対処はするが、衰えていく肌状態を止めることはできない ④ボディラインの歪み →筋力低下による姿勢の悪化や骨盤の歪み、代謝の低下によりスタイルが崩れてしまう
これらの悩みは一部、美容感度が高くない一般シニアにも共通しています。 シニア×美容の定量調査の結果では、「40歳以上の女性の3人に2人が肌に関する悩みがある」と回答しており、具体的な悩みとして、「しわ・たるみができる」が71.1%、「シミが目立つ」が66.4%となりました。
引用:趣味人倶楽部会員様 400名へのアンケート調査
また、上記の定量調査では明らかになっていない、美容感度が高いシニアならではの美意識として、ボディラインの歪みといった肌・髪だけではない美の課題が浮き彫りになっています。以下では、今回着目した美容感度の高いシニアがこれらの悩みに対して積極的に時間とお金をかけ、実際にどんな美容行動を行っているのかを紹介していきます。
ここからは美容感度の高いシニアが具体的に行っている美容行動を紐解いていきます。 前提として、今回取り上げているシニア世代の方々は美容に関して日々情報収集を行っており、若年層と同様貪欲に美容に関してアップデートを行っています。それらを踏まえての特徴的な美容ルーティンをご紹介します。
①. 新商品や新技術の右脳的探索 昨今の若年層は、美容商品に入っている成分や効果効能を重視して商品選択を行う、いわば左脳的な処理と丁寧な比較検討のもと商品選択を行っています。一方で今回のシニアたちは、自分の肌に合うかどうかはもちろんのこと、「自分が使っていて気分があがるパッケージや香りか?」「高いお金を払ってもいいと思えるブランドか?」といった、直感的な要素も大事にしています。これは子育ても終わり、自分に使える可処分所得 / 可処分時間が増えたことも影響していると考えられますが、長年親しみのあるブランドに対する圧倒的な信頼や、若年層ほど成分比較にとらわれずに自分の気分が上がるものを使いたいといった欲求が顕在化していると言えるでしょう。 Z世代のような若者はブランドのライン使いといったブランド偏重の消費は避けるといったトレンドがありますが、シニア世代にとっては長年の経験から、ブランドに対する信頼をまず第一に、その中で自分の気分にハマることを第一にしていると考えられます。
②. 肌や髪の美しさ+生活習慣の是正 先ほどご紹介した通り、シニアは肌や髪の悩みが深刻化していく世代であることは否めません。一般的なシニアは、この悩みに対して化粧品を用いることで立ち向かおうとします。しかし美容感度が高いシニアたちは、肌の綺麗さや髪のツヤだけでなく、「姿勢の良さ」「溌剌とした印象」を作ることが大事だと考えています。一般的な美容行動とされるスキンケア・ヘアケアは確かに重要であると考える一方で、それを表現し尽くすためには第三者から見られる雰囲気の醸成も欠かせないとし、食事内容の見直しや姿勢改善にも精力的です。具体的な行動で例を挙げると、お酒やコーヒーの摂取量を減らし一日に1.5ℓ以上の水を飲む、 背中が丸くならないよう姿勢を意識し、椅子に座るときは背もたれのない椅子を使うようにする、などです。このように、外見の磨き込みだけでなく内側から滲み出るような美意識も大事にすることで、同年代の中でも一際美しく見られるように努力しているようです。
③.美容医療・整形への積極的投資 シミ取りレーザーや二重整形といった美容医療・美容整形への関心が非常に高く、積極的に投資しているのも一般的なシニアとは異なる特徴です。ここまでくるとかなり可処分所得も大きく、エクストリームな行動になっていきます。ですが、若年層の間で韓国に行きプチ整形や美容医療を受けることとなんら変わらず、シニア世代においても共通言語になってきているの萌が見受けられます。今回お話を聞いた中での実際の例では、自身が通うフィットネスジムにまさに美容医療を受けている友人がおり、その友人から刺激を受けてクリニックを調べたり、実際に施術を受けるようになったシニアもいました。ここまでご紹介したように、シニアも化粧品のリサーチなどは行ってはいるものの、顕在化する課題の解消には化粧品だけでは限界があることも感じており、美容医療によって美しさを取り戻そうとするようになってきていると考えられます。もちろん、若年層の中にも美容医療 / 美容整形に対する抵抗感があるように、シニア世代でも抵抗感がある層もいるでしょう。ですが今回お話を聞いたような美容感度の高いシニア世代は、日々の情報収集の中で美容医療についても情報を取得しているため、抵抗感やハードルが低下していっていると考えられます。
このように美容感度の高いシニアたちは、これまでのシニア市場で謳われていたような 「シニアの肌・髪悩みに特化した化粧品」というカテゴリに当てはまらない、独自の美容行動を取り始めていることがわかります。このような美容行動を取り始めている背景には一体どのような価値観があるのでしょうか?そのインサイトを次項で解説します。
シニアがなぜ、美容感度を高く保ち続けるのか?どのような美容行動に魅力を感じているのか?その象徴的なインサイトをご紹介するとともに、それらのインサイトを捉えた訴求やコミュニケーションの示唆を考えてみたいと思います。
INSIGHT :−10歳を目指すのではなく、同年代の中で若々しい自分を目指したい
今回お話を伺ったシニアの方々は、年齢を重ねていく中で生じる変化や衰えは避けられないものとして正しく受容していました。その背景には、どれだけ良い化粧品を使ったとしても、老いを完全に止めることはできないという実感を強く持っているからだと考えられます。老いには抗えない、その中で目指す理想の美のあり方は、実年齢より若くみられたいのではなく、同じシニア世代の中でも一目置かれるような、『若々しさ』に溢れたシニアであるということです。若作りのための美容を重ねても、老いに抗うことはできず、どこかで実年齢と外見のバランスが崩れてしまうため、今の年齢の自分は受け入れながら、年齢に相応しい美しさを磨き上げることを大事にしています。 この価値観は、アンチエイジングや若返りといった文脈を大事にしていたこれまでのシニアより、今の若者の美容の価値観に近似してきていると思われます。では若者との違いは何か?その答えの一つとして、シニアには「美容のロールモデルが存在していない」ということだと考えます。 若者はSNSを通して、美容のロールモデルを探索し、その対象が使用している化粧品や美容ルーティンを参考にしながら日々生活しています。しかしシニア、特に60代後半以上のシニアになってくると、例えばシニア向けの商品の紹介にもかかわらず自分の年齢より若いタレントが起用されているといったように、年齢を重ねていくにつれてロールモデルに設定できる対象が減少していくという課題があるのではないでしょうか。今回お話を伺ったシニアも、ロールモデルはタレントや女優ではなく、「身近にいる美容感度の高い友人」という話をしていました。若者は人それぞれ美容の悩みが細分化されていくのに対して、シニアは共通の悩みが顕在化しやすいからこそ、その中でロールモデルとなりうる交友関係が肝要になっているのかもしれません。
このような美容シニアの価値観を踏まえると、これまでのようなアンチエイジング / マイナスX歳肌のような訴求は今後受容されにくくなるかもしれません。 ご紹介したインサイトを踏まえると、以下の方向性が検討できます。
70歳以上の後期シニアの積極的起用
POINT:70歳以上のシニアと一口に言っても、煌びやかなシニア像を与えるプロモーションは本質的には従来のシニアマーケティングとは変わりません。例えば若者がVlogを視聴するように、シニアのVlogによる共感マーケティングなども考えられます。昨今、美容商品の情報収集がシニアでも活発化していることからもわかるように、スマートフォンやその他デバイス類を使いこなすシニアは増加傾向にあります。 当社で実施した定量調査では、 「96%以上のシニアがネットショッピングの経験あり」と回答しました。もっとも多い購入手段はパソコンとなっていますが、スマートフォンからの購入も44.3%と、半数に近い割合でうまく活用できているようです。 モバイル社会研究所の調査によると、シニアのスマートフォン所有率についても60代で91%、70代で83%と大多数のシニアがスマートフォンを日常的に使うようになっています。
引用:趣味人倶楽部会員様 400名へのアンケート調査
引用:モバイル社会研究所より抜粋
このようなシニアの情報収集媒体、消費実態の変化を踏まえると、Vlogのような媒体を駆使したマーケティング施策は今後有効になっていくと思われます。 2022年にSBIエステートファイナンス株式会社が行った「シニアのYoutube利用」に関するアンケート調査によると、「Youtubeを利用したことがある」と回答したシニアは87%にのぼります。またその利用目的も、娯楽目的ではなく情報収集が目的になっているなど、今後のシニアマーケティングにおいて動画媒体でのアプローチは重要になっていくかもしれません。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000026655.html
引用:https://www.asmarq.co.jp/data/ex202007senior_sns/
シニア世代が美容への意識を高く持つ理由は、単なる若作りではなく、年齢に応じた自分らしい美を追求するためです。私たちは、この世代の声に耳を傾け、シニアの美を支援するために一緒に取り組んでいきます。シニアマーケティングに関するご相談やご質問がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。私たちの豊富な経験と専門知識を活かし、貴社のニーズに合わせた最適なご提案をいたします。定量的な美容に関する価値観を知りたい方は下記レポートをご覧ください。
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