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公開日: 2022.02.14
更新日: 2024.07.26
デジタルネイティブではないシニア世代に、web広告で興味喚起して購入いただくことに苦慮されているマーケティング担当者は多いのでは無いだろうか。
かつて4マス媒体と言われた新聞、雑誌、テレビ、ラジオ。これらの媒体こそシニア世代と親和性もあると思い広告出稿するものの、高すぎる出稿費の割には思ったほどの成果を上げられない。そう、今はシニア世代もwebで買い物をする時代で、出稿費が抑えられるweb広告の方が成果を上げやすい。しかし、web広告で成果を上げられずに行き場を失ってしまう担当者がほとんどかと思われる。
<メディアとシニアとの関係性>
今回は、株式会社オースタンスが提供する35万人のシニア会員の趣味人倶楽部運営の知見と、シニア向けに商材を提供する様々な企業の、プロダクトおよびサービス開発から、広告/販促まで幅広い業務を支援してきた経験をもとに、シニア向けweb広告を実施する上
での考え方と具体的な事例を提言する。
「シニア世代がお客様なのに、自分に目を向けるってどういうこと?」
「まずはターゲティングをして、広告出稿メディアを決めて運用するんじゃないの?」
そう疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。ポイントは2点ある。
<ポイント1:商品分類でwebとの相性を把握する>
フィリップ・コトラーによると、購買行動タイプにより消費財を分類できると説いてる。
・最寄品
購買頻度が高く、日常的に購買される商品やサービス
例)食料品、飲料、家庭用品など
・買回品
購買頻度は低く、購買前の情報収集や他商品と比較購買される商品やサービス
例)家電、家具、旅行など
・専門品
購買頻度は人それぞれとなるが、強いブランドロイヤリティをベースに購買する商品やサービスであり、比較購買の対象にはならない。
例)エルメスやベンツ等の高級ブランドなど
・非探索品
欲しいと欲求する事が通常では発生しづらい商品やサービスです。
例)保険商品やサプリメントなど
<商品分類と特徴>
こちらの「商品分類」と、「webでの戦い方」と「シニア世代の行動特性」の3軸で検討する必要がある。
一般論にはなるものの、多くのシニア世代はネットでの買い物に昔から馴染みがある訳ではない。「最寄品」や「買回品」は行きつけのリアル店舗で試したり、手に取ったりして購入に至ることが基本である。ここでのwebの戦い方は、リアル店舗に足を運ぶ時間をwebで補完することで得られる時間が価値になるため、面倒さの排除が訴求内容になる。具体的に事例として、Amazonの日常用品の定期便はまさにこのツボを抑えている。また、「専門品」に関しては、現物を見ている時間や空間、その後の使用といった体験に価値があるため、リアル店舗に来てもらうために情緒に訴えかけるような訴求内容になる。いわゆるブランディング広告である。よく話に出てくる事例としてマツダがYahoo!のブランドパネルに出稿した広告があげられる。(参考: マツダのYahoo!成功事例 )最もweb広告に向いているのは「非探索品」である。保険やサプリメントのような、早急な問題解決を図る必要性の無い不要不急である場合がほとんどである。不要性や不急性の解消をするためのポイントが衝動買い促進となる。
<商品分類とweb購買の相性>
<ポイント2:衝動買い促進のポイントは人間理解>
衝動買いを促進する対象はもちろんシニア世代であるため、お客様の理解は不可欠である。しかし、web広告に携わる人は一般的に比較的若い社会人が担うケースが多いのではないだろうか。担当になりシニア世代を必死に想像する際に、多くの人は自社のお客様データだけでは想像ができないために、両親や親族、テレビに出演するシニア世代のタレントを見て想像を固めてしまう傾向が高い。わからないことに蓋をするのが人間のため仕方ないものの、両親や親族が根源的に何に悩んでいるのかさえ理解できていないのに知ったかをするのが一番危険である。
では、どのようにすれば良いか?お客様や両親、親族と深く会話する回数を増やすに越したことは無いですが、時間が無い担当者がほとんどかと思う。重要な視点は、シニア世代と括って認識するのではなく、皆一人の未熟な人間であると認識することである。何歳になっても人から認められたい、ヒーローやヒロインになりたい、恋愛したい、モテたい、甘い食べ物も辛い食べ物も我慢したくない、お酒も好きなだけ飲みたい。それが人間の本質で、何歳になっても大きく変わらない。シニアが達観していると思っているのは大きな誤りである。
そのように考えると、私たち自身とシニア世代を、無意識に分離していたことに気付くと思う、分離して複雑に考える必要が無いことを感じていただけるのではないでしょうか?だからこそ、自分自身が経験した衝動的なクリックや衝動的な購入にこそ、衝動買いを促進させる秘訣だと思っています。
とはいうものの、一方で年齢を重ねるとともに生まれてくる特有のインサイトは間違いなく存在する。身体の衰えや、長い人生の中での経験則から導き出されるインサイトはある。今回は基本的に考慮しておく必要のある代表的なインサイトを紹介しておく。
以上のようなインサイトは若いうちはそれほど強く思っているわけではないが、年齢を重ねることで、多くの人が一定強くなってくるインサイトである。上記のインサイトがあることを考慮しつつ、年齢やその人の状況(一緒に住んでいる人がいるか、孫がいるか等)を鑑みて、商材ごとにインサイトを整理していく活動は、どの販促活動でも実施する必要がある。
では、そのような事例って何かあるの?と聞こえてきそうなので世の中の広告の事例を紹介していきたい。「非探索品」の1つであるサプリメントの広告を見てみると、0円無料訴求や半額に近い割引訴求が見られる。その瞬間に経済的な機会損失があると感じると無視できずにアクションしてしまう衝動的欲求を突いている。
例)左からサントリー「ロコモア」、かどや「ごまセサミン」、KAGOME「つぶより野菜」
また最近では、上記の機会損失訴求に加えて、アンケートや漫画を用いた広告が多く採用されている。アンケート自体は自分自身の貢献欲を満たしてくることに加え、アンケートに回答した会社のことは、これまで無関心だったとしてもその低姿勢な様子を感じ取り、肩入れしたくなる。頑張っている子を応援したくなるような感覚を想像するとわかりやすいかと思う。漫画はベタな展開だと分かっていてもその期待を裏切られるかもしれないという期待から最後まで読んでしまう。アンケートと漫画に共通しているのは、それらに触れながら商品やサービスの理解促進が進むので、購買の確立が向上する点にある。
サントリー「セサミンEX」のアンケート全3問を活用した広告。
決して私たち世代向けじゃないweb広告でも、私たちも思わずアクションしてしまうような工夫が施されている。
今回の要旨をまとめますと、
シニア世代をweb広告で振り向かせる肝は、自分自身の“衝動買い”経験から導き出すこと。 前提となる商品分類での位置付けを把握し、「非探索品」であればweb広告と一番マッチしている。「非探索品」を購買いただくのは衝動買いが必要。
衝動買いをするためには、シニア世代のお客様理解が必要だが、その前に、シニアと自分自身を分離することなく、自分自身の衝動買いポイントを掴みweb広告に転用する。 その上で、 シニアの代表的なインサイトは抑えた上で、自社商品のターゲット像を抑えにいく。貢献欲の高いシニア世代へアンケートをコンバージョンにした販促活動は有効的。本レポート記事が、マーケティング担当者の問題解決の一助となれば幸いである。
様々な企業から、シニア向けマーケティングの相談を受けることが多いが、未だにWeb広告が選択肢から外されることもあり、驚かされる。
シニア世代は、当たり前のようにスマホを契約し、SNSで友人とおしゃべりや情報交換をしたり、ECでの購入を楽しんだりしている。
今回は、商品分類毎にWeb広告の相性を比較しているが、どんな商品であってもWeb広告の必要性は、今後確実に増していくと考えている。
また、「シニア世代」と一括にして解釈するのではなく、実家に帰り、シニア世代である親御さんの行動を、一度じっくりと観察してみてほしい。思いも寄らない箇所で、スマホ操作に躓いたり、想像もできないキーワードで検索をしており、驚きと発見の連続になるだろう。
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