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高齢者向けのビジネスを検討する場合、高齢者がどのようなことにお金を使うのかを把握しなくてはなりません。しかし、どのような消費実態があるのかを詳しく理解している方は少ないでしょう。
ここでは、内閣府による高齢者が今後優先的に使いたい支出項目にどのようなものがあるのかについての調査結果もふまえ、シニアのお金の使い道ランキングをご紹介します。高齢者が何にお金を使うのかを知りたい方は必見です。
内閣府は全国の60歳以上の男女3,000人を対象に、高齢者の経済生活の実態と意識を把握するために「高齢者の経済生活に関する調査」を実施しました。 調査の結果、現在の経済的な暮らし向きについて、74.1%の高齢者が「心配なく暮らしている」と回答しています。具体的には「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」が20.1%、「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」が54.0%でした。 また、本調査では、高齢者が今後優先的に使いたい支出項目についても質問しています。ここでは、シニアのお金の使い道をランキング形式でご紹介します。
出典:内閣府/高齢者の経済生活に関する調査 第2章 調査結果の概要
高齢者が今後優先的に使いたい支出項目の1位が、「趣味やレジャー(40.4%)」でした。 会員数39万人を超えるシニア向けコミュニティサービスの「趣味人倶楽部」のデータでも、「スポーツ・アウトドア・レジャー」と「旅行・お出かけ」といったカテゴリのコミュニティの参加者が多くコミュニティでの活動も盛んなことが明らかになっています。 内閣府の調査によると、75歳以上の運動習慣のある人の割合は、男性で46.9%、女性で37.8%となっており、シニア層は、健康意識を持ちながらアクティブに趣味を楽しんでいる傾向にあると考えられます。
シニアのお金の使い道ランキングの第2位は、「食費(31.3%)」です。総務省の2023年の調査「1世帯当たり1か月間の収入と支出」によると、家計支出のうち飲食費が占める割合を示すエンゲル係数が、世帯主が29歳以下の場合は「22.9%」であるの対して、60~69歳で「27.3%」、70歳以上になると「29.7%」と収入に対する支出が高い傾向にあることがわかりました。 この傾向は、高齢者の食事量や食習慣、外食の頻度などが影響していると考えられます。また高齢者は、自身の健康維持や栄養摂取に配慮し、食費に一定の割合を充てている可能性もあります。
次に回答が多かった項目が「保健・医療関係の費用(20.5%)」で、年齢が上がるにつれて高い傾向にありました。 高齢者は健康維持のために医療費を重視します。具体的には、定期的な健康診断、治療、薬剤の購入などです。保険と医療費は高齢者の予算の中で重要な部分を占めており、生活の質を維持するために欠かせません。 厚生労働省の調査によると、令和3年度の生涯医療費は2800万円でした。内訳としては、50%に当たる1422万円が0~69歳にかかる医療費で、49%に該当する1378万円が70歳以上になってからの医療費となっています。 男女ともに70歳を超えてから医療費が増加するため、内閣府の調査でも年齢が上がるについて「保健・医療関係の費用」の回答が多い傾向にあったと考えられます。
シニアのお金の使い道ランキングの4位は、「子や孫のための支出(学費含む)(19.1%)」でした。 高齢者は、孫との時間を大切にし、孫のためにお金を使う傾向があります。ソニー生命の「シニアの生活意識調査2022」によれば、孫がいるシニアが1年間で孫に使った金額の平均は11万9413円で、2021年から1万4,731円の増加となっています。
具体的な内容としては、「おこづかい・お年玉・お祝い金」が67.2%と最も多く、次いで「一緒に外食」が43.5%、「おもちゃ・ゲーム」が39.9%、「衣類などファッション用品」が30.8%となっていました。 高齢者の方々は、プレゼントしたり一緒に飲食店で食事を楽しんだりして孫とのコミュニケーションを大切にしたいと思っているようです。
シニアのお金の使い道ランキングの第5位は、「友人等との交際費(12.8%)」です。友人との交際費に積極的にお金を出したいと考えている高齢者も多いことが散見されます。人とのつながりを大切にし、社交的な活動を楽しむことで、心身の健康を保ち、ポジティブなマインドを維持しています。 また総務省の調査によると、「経済的な暮らし向きについて心配がない」と感じている65歳以上の人は68.5%にも上り、時間的なゆとりもあることから友人たちとのつながりを大切にしたいと考える傾向がありそうです。 さらに、アクティブシニアは社会とのつながりを大切にし、自身の存在価値を認識しているのも特徴です。SNSやネット社会を通じてコミュニケーションを取り、自分を知ってくれる方たちと交流している方もいます。
一口に高齢者と言っても、年代によってお金の使い方は異なります。ここでは、前期高齢者と後期高齢者によるお金の使い方の違いを確認しておきましょう。
前期高齢者(65歳以上75歳未満)は経済的に安定しており、体力的にも活発であるため、独特の消費行動が見られます。彼らは多くの場合、定年退職後も働き続けることで経済的に余裕があり、その収入や長年にわたって蓄えた資産、退職金を使い、趣味やレジャーに積極的にお金を使う傾向があるのが特徴です。 特に、スポーツや旅行などのアクティブなレジャー活動に費やすことが多く、充実した日々を過ごしています。また、こうした活動は身体的な健康維持にもつながっており、前期高齢者にとって重要な娯楽となっています。 さらに彼らは社会的・文化的な活動にも積極的で、地域のイベントやサークル活動、ボランティア活動に参加することで、社会とのつながりを維持し、精神的な充実感を得ているのも特徴です。また、音楽や映画、読書、料理などの文化的な趣味にお金を使い、新しいスキルを学びながら、自己表現の機会を広げています。 家族との交流も重要な要素であり、子どもや孫との関係を深めるために時間とお金を使うことが多いです。特に、家族との旅行や孫との遊びの時間は、前期高齢者にとって大きな喜びであり、精神的な満足感をもたらしています。
参考:内閣府/高齢化の状況
後期高齢者とは、日本の医療保険制度において、満75歳以上の高齢者を指します。内閣府の調査によると、80歳以上の後期高齢者は「食費」や「保険・医療費」に多くの費用を割く傾向があります。これは、健康状態の維持や生活必需品に対する支出が増えるためです。一方で75歳未満の前期高齢者と比較して、後期高齢者の「趣味やレジャーの費用」への支出に少ない傾向にあります。体力的な制約から活動範囲が狭まることが一因と考えられるでしょう。
したがって高齢者の間でも、前期と後期ではお金の使い方に違いが見られます。高齢者の消費傾向は、健康状態や生活スタイル、個々のニーズなど、さまざまな要素によって影響を受けます。これらの違いを理解することは重要です。
参考:内閣府/高齢者の経済生活に関する調査 第2章 調査結果の概要
近年の高齢者の消費傾向で注目すべきなのが、ネットショッピングの利用が増加傾向にある点です。その背景にあるのが、スマートフォンやパソコンを利用する高齢者の増加です。
オースタンスのアンケート調査によると、96.2%のシニアがネットショッピングを利用したことがあると回答しています。
また毎月のネットショッピングでの消費金額に関する質問では、「1万~3万円未満」が最も多く、次いで「1~5千円未満」という回答でした。また月に1万円以上をネットショッピングで使う高齢者は全体の48%であり、ネットショッピングの利用に対する抵抗が少なくなってきていることがわかります。
高齢者のデジタル消費が活発化しており、今後もネットショッピングの利用は広がることが予想されるでしょう。
高齢者のお金の使い道として、趣味やレジャーがもっとも優先され、次いで食費、保健・医療関係の費用、子どもや孫のための支出、友人等との交際費が続きます。 また、高齢者と一口に言っても、前期高齢者と後期高齢者の違いなど、健康状態や生活スタイルによっても消費傾向が異なることも1つの特徴です。近年はネットショッピング利用するシニア層も増加しており、オンラインでのアプローチも重要になってきます。 以上のように、高齢者の消費傾向は多様化しており、個々のニーズに合わせたアプローチがますます求められてくことでしょう。
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