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公開日: 2021.06.23
更新日: 2024.11.22
コロナ禍になり、より多くの人がコミュニケーションの場を必要としている中で、今やSNSやYouTube動画などのオンラインコンテツは、若者世代だけでなくシニア世代にも広まりつつあります。
高齢化社会におけるシニア向けコンテツサービス開発に重要な要素とは何か。医療やヘルスケア分野でIT化を促進するテックファーム株式会社とオースタンス代表の菊川が、これからのシニアビジネス設計について対談しました。
▲左からオースタンス代表 菊川、テックファーム株式会社 櫻岡様、矢部様、楡井様
菊川(OST):オースタンスではこの度、御社のオンラインフィットネスサービス「LOOOM(ルーム)」のサービス改善に協力させていただきました。「LOOOM」についてご紹介をお願いします。
矢部(TF):LOOOMというオンラインエクササイズ体験のプラットフォームサービスを2020年7月にリリースしております。ZOOM(ズーム)アプリを使用して、インターネット環境さえあれば自宅はもちろん職場や学校、旅行先のホテルの部屋の中など、どこからでもオンラインで繋がり運動ができるというものです。
ただレッスンを受けるというだけでなく、インストラクターや参加者同士のコミュニケーションが取れ、イベントやキャンペーンなども開催しています。参加者は身体を鍛えるという目的以外に、人との繋がりを楽しんで心も身体も健康になってもらえるというコンセプトです。
菊川(OST):御社はもともとBtoB開発をされているイメージですが、BtoC開発というのは今回新しい取り組みですよね。
矢部(TF):はい、そうです。ちょうど1年前、コロナで緊急事態宣言が出たときに、テックファームグループとして何ができるのかという課題を考える機会がありました。そこで今後の領域としては、IT化が必要と予測される医療やヘルスケアの分野を目指して、テクノロジーを提供していこうという構想が盛り上がり、まずはBtoCへサービス提供を始めることにしたのです。
菊川(OST):新サービスをこれまでと全く違う分野で提供されるのにあたり、立ち上げ前も後も大変だったのではないですか。
矢部(TF):そうですね。テックファームとしても初めてのBtoC事業の立ち上げとなったわけですが、フィットネスという分野そのものに対する知識も経験も持ち合わせていなかった状態でスタートしたため、これまでやってきたノウハウは全く活用できず困りました。サービスをリリースするにあたってどのような価値を提供すればいいのか、どのようなコンテンツに仕上げればいいのかと、箱は作れるけれども中身はゼロからのスタートでした。その点は、このプロジェクトに入ってきたばかりの楡井が苦労したのではないかと思われます。
楡井(TF):私は、ここに来て初めてユーザーが存在するコンテツサービス開発に携わることになり、初めは考えることがたくさんあることに驚きでした。一番悩まされたのが、LOOOMをリリースした当時、すでにオンライントレーニングというものは世の中に溢れた状態でしたので、SNS運用などもどのように他社との差別化やサービスの中身の充実化を図るかなどいろいろ苦労しましたね。レッスンの内容やサービス設計も個人によって多様なので、インストラクターや社員と議論するなどして少しずつ編成していきました。
菊川(OST):オースタンスのサービス「趣味人俱楽部」と取り組みを始められた理由となるきっかけは何だったのでしょうか。
矢部(TF):LOOOMのサービス内容を充実させていくなかで課題として浮き上がってきたのが、利用者のほとんどが40代~50代の女性で、60代以上のシニア世代が圧倒的に少なかったことです。より幅広い世代に利用してもらいたいという想いがありましたので、ITリテラシーのハードルなどシニア世代の集客方法について数か月間悩みました。そんななか、たまたま日経新聞に取り上げられていた、趣味人俱楽部様と楽天フリマサイト「ラクマ」様との取り組みで、シニア世代がZOOMを使ってオンラインでフリーマーケットを楽しんだという事例を見つけ、まさにこれだ!と思い問い合わせさせていただいたわけです。
菊川(OST):なるほど。偶然の縁が重なったわけですね。実際にオースタンスがテックファーム様と取り組ませていただいた内容とはどのようなものでしたか。
楡井(TF):まずは運動習慣やオンラインエクササイズの認知度など、人の購買行動や新しいものへ挑戦するうえでハードルとなる部分を調査しました。また、レッスンのABテストも行ったのですが、当初予定していた運動強度のABテストだけでなく、コミュニケーションの量をグループ分けするという方法をオースタンス様にアドバイスいただいて実施しました。その結果、コミュニケーション量がより多かったグループで満足度が高くなることがわかり、シニア向けに限らずLOOOM全体にはコミュニケーションの要素が必要であると認識できました。
菊川(OST):オースタンスといろいろ取り組みさせていただいと思いますが、そのなかでも特に良かったと思われる点や補完できた部分はありますでしょうか。
楡井(TF):オースタンス様には、シニア世代向けインタビューの質問内容やサービス設計を考えるうえで、ユーザーが抱えるネガティブ要素をいかになくすかという視点で捉えるなど、目から鱗のアイデアをいただいております。例えば、シニア世代に多くみられたレッスン中のカメラオンに対する恥ずかしいという意見を、「カメラオンにすることで他の参加者との一体感が得られる」というポジティブな要素に置き換えるという視点をいただきました。実際コロナ禍によって利用者が増加し、新規でもカメラオンで参加してコメントくださる方も多数いらっしゃいます。
矢部(TF):オースタンス様には提案当初からしっかりと我々の課題を認識してくださり、想像以上にスピード感をもってご提案をいただいたことで早期解決に繋がったと感謝しております。また、シニア向けの体験設計の最適化だけでなく、今後サービスを計画的に成長させていくという長期的な視点でご提案いただくなど、期待以上の対応していただけたことに信頼性の持てるパートナー様だという印象です。
菊川(OST):オースタンスでは、もともとシニアインフルエンサーのプロデュースがきっかけで、シニア領域のWEBサービス事業を始めたわけですが、テックファーム様としては、今後高齢化社会においてのシニア領域など、サービスをどのように展開されたいなど予定されている部分はありますか。
矢部(TF):そうですね。今回、LOOOMをリリースしたことによりシニア向けの体験設計として必要な要素や課題が見えてきましたので、それを踏まえたシニア向けレッスンとしての最適化を図ることで、構想していた医療やヘルスケア領域でも提供価値が発揮できるのではと考えています。例えば高齢者住宅に住む高齢者向けに、LOOOMを使用した健康のパーソナルチェックやオンラインで体調管理ができるというように。コロナワクチンなど今まさに課題になっている「予防」という視点で、IT企業として何かしら貢献できるのではと思います。
菊川(OST):なるほど。これまでのBtoBよりもBtoCでシニアビジネスの成立をお考えということですね。オースタンスのポリシーとしては、ライフスタイルを重視した人とのつながりを最優先にしています。例えば健康やヘルスケア分野へ事業展開するのであれば、ポジティブなものとしてシニア世代へ捉えてもらえるよう広げていきたいですね。テックファーム様が医療にフォーカスされているのにはどのような背景があるのですか。
矢部(TF):やはりテクノロジー会社として、IT化がまだ不十分な分野でこそビジネス的な価値があると考えます。特に医療や農業など持続可能な社会作りに必要不可欠な分野において、我々のテクノロジー技術でさらに豊かさと最適化が与えられるのではと。その一つとして、これからの高齢化社会におけるシニア世代が抱える予防や健康という課題を少しでも解決していけたらと思います。
菊川(OST):そうですね。テックファーム様はもともとテクノロジーの会社ですし、今回LOOOMをリリースしたことで技術的な面だけでなく、ユーザーとの繋がり方や解決策など対応できる部分が増え、予防という分野へのユーザーの糸口にもなりやすいですよね。お客様やインストラクター、そして社員との関係性を立ち上げ時から築き上げられていることでより柔軟性のあるサービスを作られるなど、人との繋がりを大切にされるという考え方に共感します。
菊川(OST):最後にですが、我々オースタンスでは、歳を重ねていくことで得られる人のエネルギーを「エイジングエネルギー」と呼んでいます。テックファーム様にとっての「エイジングエネルギー」とはどのようなものだとお考えですか。
矢部(TF):歳を重ねていく上で必要なのは、身体の健康だけでなく心の健康を保つこと。自らやりたい事を続けながら楽しみを持って生きられることが大切だと考えます。LOOOMに参加されるみなさんがモチベーションを持たれており、自らコミュニケーションを取るなど積極的に関わりもつことで一緒に楽しもうとされている様子こそが、まさに「エイジングエネルギー」ではないでしょうか。
菊川(OST):本日お話しいただいたように、シニアビジネスで新しい事業を展開していくには、単にオンラインという技術的な面や心理的な面でハードルを下げるだけでなく、コンテンツそのものを自由に楽しんでいただけるようなサービスに仕上げていくことが大切です。今回テックファーム様との取り組みで共通点が多いことがわかりましたので、今後コミュニティなどBtoBの分野でもユーザーにとってより良い仕組み作りの部分でご一緒できるのではと思います。