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公開日: 2023.07.21
更新日: 2024.11.22
シニア層をターゲットにしたビジネスを展開している方々にとって、シニアマーケティングの方法がわからない、成功するためのポイントが掴めないといった課題は非常に重要です。
本記事では、これらの課題を解決するために、シニアマーケティングの定義や重要性、シニア層の分類と特徴を詳しく解説します。さらに、シニアマーケティングを成功させるための具体的なポイントや成功事例も紹介することで、シニア層に対する効果的なマーケティング戦略の参考にしてみてください。
シニアマーケティングとは、65歳以上を中心としたシニア層に向けたマーケティング活動です。 WHO(世界保健機関)では65歳以上を高齢者の目安としており、日本でも「高齢者の医療の確保に関する法律」などで同様の基準を採用していますが、法律や制度によって定義は異なります。 世界的に高齢化が進んでおり、WHOのデータによると2030年には世界人口の6人に1人が60歳以上になる見込みです。シニア層は経済的に安定し、可処分時間も豊富なため、企業にとって魅力的な市場といえます。 ただし、シニアマーケティングでは年齢だけで対象を区切るのではなく、退職や健康変化など生活環境の転換点に着目したアプローチが効果的です。そのため企業には、シニア層の実態を正しく理解し、適切な戦略を立てることが求められています。
シニアマーケティングが注目される理由は、シニア層の増加とその市場規模の拡大にあります。 シニア層は年々増加しており、この増加は今後も続くと予想され、シニア層をターゲットにしたマーケティングがますます重要となってきます。

シニア層の割合は年々増加しています。2023年10月時点では、約3,623万人に達し、今後もさらに増加する見込みです。2040年には日本の総人口に占める65歳以上の割合が約35.3%に達すると予測されています。2050年にはさらに増加し、65歳以上の人口割合は約37.7%に近づくとされています。
このように、シニア層の人口が年々増加していることから、シニア層をターゲットにしたマーケティングが重要となってきているのです。
シニア層を「65歳以上」と一括りにする時代は終わりました。現在ではアクティブシニア、ソロ活シニア、ケアが必要な高齢者など、ライフスタイルや健康状態によって細かく分類する必要があります。 たとえば、65歳以上の一人暮らしは2020年に約672万人でしたが、2040年には約1,041万人に達する見込みです。また、65〜74歳と75歳以上では行動パターンやニーズが大きく異なります。 医療や介護の進歩、定年延長、趣味や学びへの意欲などにより、従来の「受け身な高齢者」というイメージは当てはまりません。マーケティングでは年齢だけでなく、価値観、健康状態、可処分時間などで細分化したアプローチが求められます。
シニア関連市場は急成長を続けています。2023年時点でシニア関連市場は96.4兆円に達し、2025年までには100兆円を超えると予測されています。内訳は医療が29.0兆円、介護が11.7兆円、生活産業が55.7兆円などです。 参照元:ニッセイ基礎研究所「高齢者市場開拓の視点~100 兆円市場が求める商品サービスとは」
コロナ禍で一時停滞したものの、2023年以降は回復傾向にあり、2025年も拡大が続いています。市場成長の背景には、シニア人口の増加だけでなく、自由時間や所得の増加、旅行・趣味・美容などへの関心の高まりがあります。 特に生活産業の伸びが顕著です。中でも、娯楽分野の成長が注目されています。この巨大市場を攻略するには、医療・介護だけでなく趣味・旅行・教養といった分野にも目を向けることが効果的です。
シニア層を一括りに捉えるのではなく、ライフスタイルや健康状態、経済状況によって4つのタイプに分類するアプローチが効果的です。ここでは各タイプの特徴を解説します。

アクティブシニアとは、健康で活動的なシニア層を指します。60代前半から70代前半が中心で、意欲と活力にあふれています。退職金や年金、貯蓄により経済的な余裕があり、旅行やレジャー、趣味への投資に積極的です。 加えて、デジタル機器の利用にも前向きで、SNSやYouTubeなどを活用する層も増えています。主な関心は旅行、健康維持、学び直し、孫との交流などです。 このような消費意欲の高さから、高価格帯の商品でも価値や満足度が高ければ購入する傾向があります。「高齢者向け」という表現よりも、「人生を謳歌する」という前向きな訴求が効果的な層といえます。
ディフェンシブシニアは、年金が主な収入源で大きな出費を控える層です。健康状態は良好ですが、経済的な余裕が限られています。そのため消費行動は慎重で、生活必需品や節約に関心を持つ傾向があります。 家族の扶養や介護の負担を抱えている場合もあり、将来への経済的な不安から消費に消極的になりがちです。4つの分類の中で最も人口が多いタイプとされています。 この層には、低価格でコストパフォーマンスが高い商品やサービスが適しています。また具体的な節約メリットや、長期的な安心につながる保険、生活サポートサービスへのニーズも見られるのです。
ギャップシニアは、「できること」と「したいこと」にギャップを感じる層です。要介護ではありませんが、身体機能の衰えを実感し始めています。収入は年金が中心で、将来の健康や経済面に不安を抱えています。 そのため趣味などへの参加に消極的になり、消費行動も生活必需品が中心です。不安や孤独を感じやすく、物事を諦めがちな心理状態にあるのが特徴です。 この層には、日常生活をサポートする補助具や健康食品、手軽に始められる健康維持プログラムなどが求められています。また社会とのつながりを提供するコミュニティサービスも効果的です
ケアシニアは、要介護認定を受け、日常生活にサポートが必要な層です。家族や介護スタッフの支援を受けながら生活しています。 この層の最大の特徴は、商品やサービスの利用判断を本人ではなく、家族やケアマネジャーなどの第三者が行う点にあります。そのため介護用品、福祉用具、在宅介護サービス、見守りサービスなどは、利用者本人ではなく家族や医療関係者に向けた訴求が必要です。 収入は年金が主で、公的制度や行政の影響を大きく受けます。今後、高齢化が進むことでこの層の人口も増加すると予想されており、安全性や機能性、介護負担の軽減を明確に伝えることが求められています。
シニアマーケティングを成功させるためには、シニア層の特性を理解し、細やかな配慮をともなった戦略を展開することが必要です。
特に重要なポイントについて詳しく解説していきます。
シニアマーケティングを行う際には、ターゲットの年齢層を広げすぎず絞ることが重要です。 シニア層と一口にいっても、年代によってライフスタイルや価値観はさらに大きく異なります。例えば、60代と80代の人では、求めるものや興味のあることが大きく異なります。
一言でシニアとして分類するのではなく、ターゲットとなる年代を明確に絞ることで、効果的なマーケティングが可能になります。
具体的なペルソナを設定することも大切です。
シニア層のライフスタイルや価値観、趣味・嗜好を細かく分析し、その情報をもとにペルソナを設定します。
また、固定観念に基づいたペルソナ設定は避け、「この年代といえばこうでしょう?」といった観念からまずは疑ってみることで、意外なニーズが発見できることもあります。
ターゲットとなるユーザーの日常の過ごし方や趣味などのライフスタイル、価値観や購買態度など設定してくことで、よりターゲット像が明確にすることで顧客目線のマーケティングにつながります。
シニアマーケティングでは、表現やクリエイティブにも注意が必要です。「高齢者」や「シニア」という言葉にネガティブな印象を抱く人もいるため、ターゲットのシニア層が嫌悪感を抱きそうな表現は避け、「70歳以上」など言い換えをするのが効果的です。
また、広告のデザインは見やすさや読みやすさを重視し、大きな文字や明るい色使いを心がけることも重要といえます。
最近ではシニア層もインターネットを積極的に活用しているため、デジタルマーケティングの戦略も年々重要になってきています。
総務省のデータによれば、65歳から74歳までインターネット利用率は80%を超えており(総務省のデータ)、SNS利用率も急激に増加しています。
このため、デジタル広告やSNS広告を活用し、シニア層に合わせたコンテンツを配信することで、より効果的なアプローチが可能です。
シニア層は購買に慎重で、商品やサービスが本当に価値があるかを重視します。機能や価格だけでなく、感情的価値である安心感と信頼を提供することが必要です。 まずサポート体制を明確に伝え、アフターサービスや電話・対面でのサポートがあることで購入後の不安を取り除きます。また健康や安全といった生活の質向上に関するメッセージも効果的です。 納得感を持たせるには、客観的なデータや専門家の推薦を打ち出すことが有効となります。さらに実際に利用したシニアの口コミや体験談を詳しく紹介することで、自分事としてイメージしやすくなります。 無料体験やトライアル、返金保証などを提供し、導入ハードルを下げることも効果的です。
シニアマーケティングを成功させるためには、シニア層の特性やニーズを理解し、適切な戦略をとることが必要です。
ここからは具体的な有名企業の成功事例を見ていきましょう。
LIXILは、より快適な住まいと暮らしを実現する幅広い住関連サービスを提供する企業です。 LIXILの新商品の全身が温まるシャワー商品「ボディハグシャワー」のプロモーションでは、シニア顧客層の行動心理を踏まえた施策により、シニア層の見込み顧客獲得や、CVに繋がる成果となりました。
シニア層の消費行動の特徴として「新しいものにはなるべく手を出さないでおこう」という傾向があります。また「ボディハグシャワー」には浴び心地に特徴がある点から、購入には体験した人の生の声が重要なポイントだと判断し、ボディハグシャワー体験会を設定した上で、商品そのものに興味を持ってもらうために「アンケート型CV獲得メニュー」を実施しました。

「アンケート型CV獲得メニュー」は、アンケートという形式で、社会との繋がりが少なくなるシニアの貢献欲求を刺激し、アンケート協力を通じて自然に広告に触れてもらうことができます。
またアンケート回答前に、広告感のない商品の理解特化ページを用意することで、アンケートに協力という形で流入してきたユーザーも商品についての理解が深まり「少し気になる」といった態度変容を引き起こすことに繋がります。
今回のアンケートでは、CVに繋がるような魅力づけを行う設問や、資料請求を獲得する設計を行い、 アンケート協力のお礼として商品カタログや資料をプレゼントする形式で実施。これらの施策により、資料請求は1000件を超え、見込み顧客の獲得に成功する結果となりました。
レディースアートネイチャーが実施したウィッグへの関心を強めてもらうためのオンラインイベントは、中高年・シニア女性の心理やウィッグの特性を踏まえたシニアマーケティングの成功事例の1つです。

このオンラインイベントの施策の核となる部分は、「メイク」をテーマにした点です。 ウィッグをテーマとした場合、対象がウィッグに対する顕在的なニーズがある層に限定されるため、集客数が減少する可能性がありました。そこで、より関心度が高くウィッグとの親和性がある「メイク」をテーマにすることで、集客の最大化を狙い、結果として250名以上の方が参加しました。
また、広告感を排除することも重要なポイントでした。シニア層は商業広告に敏感であり、イベントがウィッグの販売目的だと受け取られた場合、警戒心が生まれ集客や興味喚起に悪影響が生じます。そのためイベントでは、メイクを中心に置き、「髪のスタイルアップ」としてウィッグを自然に紹介する形で商業広告感を感じさせない設計としました。
イベント後のアンケート調査では満足が98%という高い評価を得た結果となり、シニア層に対する製品の認知度と好感度を大幅に向上させ、数百名に及ぶカタログ送付を実現し、顧客リスト化に成功しました。
株式会社SYLAが展開する「シニアテックマンション」事業(中高年向けマンション事業)に対し、事業成長支援を実施しました。
まずは、趣味人倶楽部会員様へのデプスインタビューを通じてシニア層のニーズとライフスタイルを深く調査し、この知見に基づきターゲットに寄り添ったUX/UIデザインの公式サイトを開発。
また、ターゲット設計を踏まえてWEBマーケティングコンサルティングと広告運用を強化しました。特に、見学イベントの企画・実施と、コールスタッフによる集客対応を連動させることで、資料請求から契約に至るまでの成功率を劇的に改善。
結果として、サポート開始後まもなく過去最大のお問い合わせ数と成約数を達成し、事業の急成長を実現しました。
終活・相続サービスを提供する「終活と相続のまどぐち」では、アンケート型広告の活用により、累計200件以上の資料請求・来店予約を獲得しました。 同社が抱えていた課題は、準顕在層へのアプローチです。終活に関心はあるものの行動に移さない層に対し、従来の広告では資料請求から来店への転換率が低い状況が続いていました。 この課題に対し、アンケート型広告を活用して広告感を排除しながら、心理的ハードルを下げる設計を実施しています。具体的には、趣味人倶楽部やLINE広告、Meta広告を通じて終活に関する価値観を問う設問を用意し、回答後に資料請求や来店予約へ誘導する導線を構築しました。 加えて、趣味人倶楽部との合同セミナーを開催し、約40名の参加を得ています。 この取り組みの結果、累計200件以上の資料請求・来店予約を獲得し、セミナー参加者の10%以上が来店申込につながりました。オンラインとオフラインを組み合わせた施策が、行動ハードルの高い終活分野においても成果を生み出した事例です。
相続不動産売却サービスを展開する大和ハウスリアルエステート様は、相続と相性が良い媒体で獲得が見込める媒体や施策を模索されていました。
上記に対し、趣味人倶楽部やMeta広告を活用しつつ、広告感を排した商品理解に特化したランディングページを開発することで、サイト離脱率を約80%抑制しました。さらに、関心度を高めるアンケート内で無料査定のオファーを行う設計を取り入れ、顧客の情報入力への心理的ハードルを軽減。
この施策により、「相続」に加えて「住み替え」などの新たな訴求軸を開拓し、結果として月間40件以上の無料査定申し込み獲得を実現。事業拡大に貢献しました。
大手生命保険会社様に対し、シニア層を新たなターゲットとした金融・保険商材のマネーセミナー集客を支援しました。
集客が困難であった全世代向け媒体から切り替え、趣味人倶楽部やLINE、Meta広告などのシニア向け媒体・SNSを活用。LP制作から広告配信、会場手配、当日運営までを一貫して実施しました。
結果、「資産運用の基本セミナー」に約30名が参加し、参加者の80%以上が無料相談を申し込むという高い成果を達成しました。
今後のシニア層の増加と市場の拡大にともない、シニアをターゲットとしたマーケティングはますます重要になることが予想されます。
シニアマーケティングを成功させるためには、シニア層の特性やニーズを正しく理解するのはもちろんのこと、ターゲットの年齢層を絞り込んだり、シニア層に合わせた表現やクリエイティブにも注意するなどさまざま重要な要素があります。今回ご紹介した具体的な成功事例など、自社のシニアマーケティング戦略の参考にしてみてください。
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オースタンスは、シニア向けマーケティング/事業開発支援会社です。 シニア向けマーケティングは、一般的なマスマーケティングとは違った視点で、シニア世代のインサイトを深掘りして施策を考える必要があります。 シニア向けマーケティング/事業開発でお悩みのご担当者様は是非お気軽にご相談ください。

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